アデノ随伴ウイルス(AAV)の持つヒト第19染色体長腕(q13.4-ter)への特異的に挿入機構を利用して、その特定の領域(AAVS1)に遺伝子ターゲティングできる遺伝子導入法を開発することを目的とした。AAVベクターがAAVS1領域に挿入されるために必須であるが細胞毒性を持つRep蛋白を必要な時だけ短期間に発現させるために、Rep遺伝子をBacteri ophage P1のCre/Lox P系を利用した発現プラスミド(pLRPL)として構築した。このpLRPLプラスミドとCre発現プラスミドおよびITRを持つAAVベクタープラスミドとをそれぞれリポソーム法にてヒト由来の293細胞へ導入したところ、Creの発現に依存したRep蛋白の発現が生じることを確認した。短期間だけ発現するRep蛋白の作用でAAVベクターがAAVS1領域に特異的に挿入さたることをAAVS1とAAVベクターのITRのプライマーを用いるnested-PCR法およびAAVS1領域に設定したオリゴ・ヌクレオチドをプローブとして用いたサザンブロット法により、部位特異的挿入を確認した。Direct-sequenceによりITRおよびAAVS1内の挿入部位を検討したところ、挿入部位はITR部分およびAAVS1部分ともに既報の野生型AAVの挿入部位と類似していた。さらに、ネオマイシン耐性遺伝子導入用のAAVベクタープラスミドを用いて、293細胞のAAVS1領域への導入効率を検討したところ、ネオマイシン耐性コロニーの12%に部位特異的遺伝子導入が認められた。
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