本研究は、薬物代謝酵素蛋白の挙動を非侵襲的な診断や医薬品の副作用の予測や回避のマーカーとして利用可能か否か検討することを目的としている。 本年は、腎機能障害時(IgA腎症、腎硬化症、膜性腎症、慢性腎症、ループス腎症、糖尿病性腎症:41例)における尿中グルタチオンS-転移酵素(GST)の挙動について予備的検討を行った。 GST-α(GST1-1)抗体を用いたイムノブロット分析から、ヒト肝可溶性画分に存在する酵素と同一分子量の蛋白が、尿中に認められた。また、GST-π抗体を用いたイムノブロット分析においても、胎児肝可溶性画分に存在するGST-πに対応する分子量の蛋白が、患者の尿中に認められた。今後症例数を重ねる必要があるが、CCrを指標とした中等度障害患者の尿中にGST-π抗体が認識する蛋白の排泄が見られる傾向があった。また、GST-α(GST1-1)抗体が認識する蛋白の排泄は、軽度腎障害時から見られる傾向にあった。さらに、両抗体で認識される蛋白の尿中排泄は必ずしも同一の挙動を示さなかった。たとえば、ループス腎炎患者6例のうち、4例にGST-π類似蛋白が認められたが、GST-αは全例に検出されなかった。これらの結果から、GSTイソ酵素の尿中排泄挙動が診断の指標になる可能性が示唆された。
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