【目的】 肝細胞内遊離形薬物濃度の実測を目的に、薬物の抗体を封入した膜融合リポソームを用いた定量法の確立を行う。基礎的研究としてキニジンおよびその抗体を用い、肝細胞内遊離形薬物濃度の測定を試みた。 【方法】 膜融合リポソームの調製:ホスファチジルセリン、レシチン、コレステロールを重量比4.8:1:2で混合し、溶媒を留去することにより脂質薄膜を作成した。これに抗体溶液を添加し、振とうすることによりリポソームを調製した。調製したリポソームに紫外線照射により不活性化したセンダイウイルス(HVJ)を加え、4℃で30分、37℃で2時間インキュベーションした後に融合していないHVJをショ糖密度勾配遠心により除去し、抗体封入膜融合リポソーム(HVJ-Lip)を調製した。 膜融合リポソームによる肝細胞内遊離形キニジン濃度の測定:常法に従い肝細胞を調製し、膜融合リポソームを用い、抗キニジン抗体あるいは対照としてのIgGを細胞内に導入した。この細胞を用い、[^3H]キニジンの取り込み実験を行い、可溶化後放射活性を測定した。 【結果・考察】 抗キニジン抗体導入肝細胞においてIgG導入肝細胞と比較し、高いキニジンの取り込みが認められた。また、膜融合能がないリポソームによる抗キニジン抗体、IgG導入後の肝細胞によるキニジンの取り込みにほとんど差は認められなかった。さらに、キニジンの取り込みにおける抗体未封入の膜融合リポソームあるいは膜融合能がないリポソームの影響は認められなかった。したがって、膜融合リポソームは細胞内遊離形薬物濃度の測定に有用である可能性が示唆された。
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