[研究目的]年々増加傾向にある糖尿病の治療では、持続的高血糖による血管障害性合併症が最大の問題で、治療目標はこの合併症進展阻止にある。従って、日常的に厳密な血糖コントロールが重要で、特に食後過血糖の改善が重視される。この様な観点から速効性治療薬の開発が急務であったが、本研究者らが発明した速効・短時間作用型経口糖尿病薬(A-4166)が、開発された。また、インスリン依存性糖尿病患者のために速効型インスリン(Ins)製剤が開発された。しかし、最も呼吸が早い腹膜壁皮下注射でも効果発現までに30分を要し、その作用は5時間遷延するなど、血糖コントロールが不完全である。本研究は、A-4166の発見がIns腸管吸収促進物質探索研究に端を発したことから、A-4166関連化合物に速効性+Ins腸管吸収促進作用を有する可能性が期待できるので、その観点から再び検討することにより、超速効性経口Ins製剤創製の基礎とすることを目標とする。 [平成9年度実施結果]1.(1)N-(trans-4-isopropylcyclohexylcarbonayl)-D-phenylalanine(A-4166)をリ-ド化合物とし、DBA/2とIDDM-DBA/2での血糖降下とIns分泌作用のパターンを検討した。(2)併用するIns製剤を検討した。(3)A-4166(po)とIns(sc)を、IDDM-DBA/2に併用投与し、投与量と血糖降下の関連性を検討した。以上の実験の結果、A-4166は外因性Insの作用を強める以外に、Ins作用の遷延を抑制する作用のありことが示唆された。 2.上記情報を基に、A-4166のcis体とD-体および約10種の化合物を選択し、ICRおよびDDYにおける血糖降下のパターンの検討を継続して行っている。
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