障害・虚弱高齢者11名(83.5±5.5歳)に対してジェット水流運動の短期効果を検討した。同一対象者に対してジェット水流運動を含む運動(ジェット時)と含まない運動(非ジェット時)を異なる日に実施し、それぞれ運動前後、及び2時間後に以下の項目について測定し、得られた結果は以下のようにまとめられる。 1.血圧:収縮期血圧・拡張期血圧 (1)運動前と運動2時間後ではジェット時・非ジェット時とも有意に上昇した。これは対象者が高齢者であるため、血圧の回復に時間がかかるからと考えられる。 (2)拡張期血圧が非ジェット時でのみ運動直後に有意に上昇した。これは非ジェット時では運動により心拍出量が増大するが、ジェット時では末梢筋組織の細動脈拡張による全血管抵抗の低下により、血圧の上昇が抑えられたと考えられる。 2.加速度脈波:循環動態の指標とされているAPG index (1)運動2時間後にジェット時が非ジェット時に比べて有意に高い値であった。運動2時間後に効果の差が見られることから、ジェット水流運動は効果が持続する運動と考えられる。 (2)APG indexが運動後、2時間後と低下する対象者が3名いた。ジェット水流運動が循環動態に対してどのような影響を与えるのか、その作用機構も含めた検討が今後の課題である。 3.自律神経活動:心拍変動の時系列データのパワースペクトル手法による周波数解析の試み(3例) (1)ジェット時・非ジェット時とも副交感神経活動は運動後の低下し、2時間後に回復するが、運動前と2時間後でジェット時では上昇、非ジェット時では減少する傾向が見られた。 (2)加齢に伴い副交感神経活動が抑制されることを考えれば、ジェット水流運動が虚弱高齢者に望ましい運動となりうる可能性が予想された。 (3)症例数を増やしてさらに検討することが、今後の課題である。
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