研究概要 |
1.平成9年度は、同一医科大学の看護学生(3年生60名)と医学生(5年生50名)を対象とし、臨床実習体験を通して認知した各自の葛藤場面や対処法について、共通点と相違点を探るために調査を実施した。 2.方法は、各学年の臨床実習終了直後、看護学生と医学生に同一調査用紙を用いて実施した。調査用紙はLutzen K., et al, Moral Sensitivity Test, MST(1994年)を一部改変して作成した。調査内容は葛藤場面と対処法に関する35項目を6カテゴリーに分類したものである。6つのカテゴリーは、内省的態度(8項目)、道徳性の構築(8項目)、慈悲(なさけ)を示す(8項目)、自立(6項目)、葛藤体験(3項目)、医師の判断への信頼(3項目)であった。 3.調査データーの統計処理には、SPSSを用いた。 4.その結果、看護学生は医学生と比較して、内省的態度は2項目(医学生は1項目)、道徳性の構築は1項目(医学生は1項目)、情けを示すは1項目、自立は2項目、葛藤体験は2項目が有意に高い値を示した。一方、医学生は医師の判断への信頼に関する3項目すべてが有意に高い値であった。 5.平成10年度は同一看護学生が、母性・小児・精神・老人・地域看護学実習(各3週間)を経た成人看護学実習終了後の4年次に、同一調査用紙を用いて追跡調査を実施し、葛藤場面の認知と対処法に変化があるかを分析する。一連の内容分析により、看護教育における臨床実習の意義、医学教育との相違点、今後の臨床看護学実習内容・方法の在り方等について示唆する。
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