研究概要 |
本年度は3年計画の初年度であり,以下の探索的・試行的な予備研究を実施した. 1.障害児をもつ母親2名のインタビューを試行的に実施し,過去から現在に至るまでの母親自身の心身の変化や日常生活面での苦労・工夫点等を自由に述べてもらった.同時に,基礎的データの調査用紙 (案) を作成し,家族構成,現在までの保健・医療サービスの利用経過,母親からみたソーシャルサポートの実状等の情報を調査した.インタビュー内容と基礎的データーの分析を実施し,本格的な予備研究に向けた方向性と方法論を検討した.当事者にとっては,現在も進行中の 「とらわれ」や「きづき」の過程を振り返ること自体が,自己啓発的な機会になるようなインタビューや調査用紙の工夫がきわめて重要であることが示唆された. 2.臨床心理的な援助論の概念モデルとして,キュブラ-・ロスの「死の受容過程」およびユング心理学の「普遍的無意識」の人格論を選択し,両者にみられる(1)人間理解における心理学と宗教との関連,(2)「とらわれ」,「気づき」,「癒し」に関連した心理学的な記述概念の検討を開始した. 3.仏教心理学的な援助論モデルとしては,「内観法」と「ビハ-ラ」にみられる前項と同様の観点からの文献的な検討を開始し,こうしたアプローチの根底にある人間理解の基本概念と唯識説との関連を探る方向性を探索した.特に後者に関しては,今後の研究継続に対する仏教学の専門家の指導と協力を依頼した.
|