研究概要 |
平成9年度の研究目的は,わが国の主な宗教と仏教における特徴的なspiritual needs、ならびに仏教の生老病死に対する考え方,それに基づく宗教的活動など,看護に必要な内容について明らかにすることにあった.文献から,日本の宗教の現状を把握するとともに,仏教の中から主な7つの宗派を選び,ターミナル・ケアに関心を持つ15名の僧侶に面接調査を実施した.本年度は,その中から浄土真宗についてまとめ,以下の結果を得た.浄土真宗の生老病死のとらえ方は,釈迦の四苦の考えを踏襲しつつ,「死は生物的生命の終わりであるものの,死後は浄土に往き生まれる」というものであり,往生のためには,阿弥陀仏の本願を信じて称名念仏を称えることが大切である.浄土真宗の教団は,ビハ-ラ教育を行い,教育を受けた僧侶や信者がビハ-ラ活動を行っているが,病院の受け入れ体制の不備などから十分に活動できない状況もあった.また信者との信頼関係に基づく臨床法話では,死の間近な人が往生を信じることができ,本人や家族が心の安心を得ることができていた.これらから,信仰を持つ終末期患者のケア時には,患者が信仰を継続し,宗教的な活動に参加・実践できるよう環境を整えることが大切であることが明らかになった. また,臨床看護婦の宗教的ニーズとケアに対する意識や実態を明らかにすることを目的とした調査を実施した.2県の臨床看護婦216名に実施した質問紙による調査では,大半の看護婦が「終末期患者は,宗教的ニーズをもっている」と考え,かつ「宗教的ケアを行う必要がある」と考えていた.しかし,終末期看護経験を有する看護婦の内,宗教的ニーズに出会った経験のある者は約3割と少なく,ケアを行った者はその半数にも満たず,基礎および継続教育の強化・充実を図るとともに,保健医療施設において患者が宗教的な活動を行えるようにする必要があることが明らかになった.
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