研究概要 |
平成10年度の研究目的は,昨年度面接した残り6宗派の僧侶の面接内容から,仏教における特徴的なスピリチャルニーズ,ならびに仏教の生老病死に対する考え方,それに基づく宗教的活動など看護に必要な内容についてまとめること,昨年度の宗教的ニーズとケアに関する調査から看護の実態をまとめること,神官およびチャプレン等の面接を行うことであった.仏教に関しては,天台宗と浄土宗の2つの宗派についてまとめ,以下の結果を得た.天台宗および浄土宗の僧侶のとらえ方は,釈迦の四苦の考え方を踏襲し,それらの苦を乗り越えることが人生の課題であった.死は最後ではなく,死後は浄土に生まれるという点が共通していた.相違点は天台宗では苦をどうとらえるかに主眼が置かれ,浄土宗では阿弥陀仏の本願を主体的に受け入れ,念仏を行うことが大切とする点であった.次に宗教的ニーズとケアに関する調査から終末期看護経験のある看護婦の認識についてまとめ,以下の結果を得た.終末期患者の宗教的ニーズをとらえた看護婦は約3割であり,その内容は,「入信および信仰と宗教的活動」「神・魂の存在を信じること」などの7つに分類された.宗教的ニーズに対するケアを実践した看護婦は,ニーズを捉えた看護婦の約5割弱であり,その内容は,「患者の宗教的話しに関心を示す」「共に存在し,祈る」などの4つに分類された.宗教的ケア上困った内容は「病院における宗教的体制の不備」「宗教に関する看護婦の知識・対応能力の不足」「患者の信仰心に対する家族の反対」であった. 神道に関しては,ターミナルケアに関心のある3名の宮司に面接調査を行った.キリスト教に関しては,カトリックとプロテスタントの双方から面接調査を行った.面接対象者は,3つのホスピスの4名のチャプレンとキリスト教の教育経験のある3名の牧師または神父の資格を持つクリスチャンであった.
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