某大学病院精神科閉鎖病棟(保護室を持つ)にて過去1年間の入院患者の行動制限の実態と看護者の直面する患者状況を看護記録より把握した。 調査対象となった病棟の1年間の在院患者411名中、約3分の2が行動制限を経験しており、その内訳は、身体拘束のみ経験者151名、保護室のみ経験者62名、身体拘束及び保護室経験者56名であった。身体拘束経験者は、点滴等による全身管理の必要な精神分裂病以外の高齢の女性が多く、保護室経験者は精神症状の激しい若い精神分裂病の男性が多いのが特徴的で、身体拘束及び保護室経験者は、精神症状が不穏となって保護室隔離となり、その後、精神・身体両面の治療・処置の必要性から身体拘束されていた。このように、患者の行動制限は精神症状だけでなく、身体症状が密接に絡んでいる実態が明らかになった。 また、看護者の直面する状況については、患者の行動制限が入院当日の緊迫した状況の中で開始されることが多いため、患者の安全を守ることと安楽なケアを提供することとの葛藤は行動制限を施行するときよりも、むしろ患者の変化に応じて制限を解いていく段階で強く、看護者の観察・判断力に委ねられる部分が大きいことが看護記録からも読みとれた。 患者の行動制限は保護室隔離と身体拘束に大別され、看護者の直面する患者状況は異なるが、それぞれが看護者の葛藤及び対処行動にどう反映されるのか、今後は、看護者にアンケート及び面接調査を行い、行動制限を行う看護者の葛藤を明らかにしていく。
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