従来、試験管内(in vitro)の研究において、脂質層にあるビタミンEがラジカルに水素を引き抜かれてトコフェリルラジカルになったとき、水層に存在するビタミンCが水素を供与して、トコフェリルラジカルからビタミンEを再生することが知られている。さらにその反応速度までが決定されているが、生体内(in vivo)で実際にこのような反応が意味を持つかどうかについては種々の研究があるが、明確な解答は得られていない。そこで、抗酸化系ビタミンCとEの相互作用を検討した。方法論として、遺伝的にビタミンCを合成できないODSラットを対照群、ビタミンC欠乏、ビタミンE欠乏、ビタミンC、E同時欠乏群の4つの群にわけ、各種臓器中の両ビタミンの濃度変化を追跡した。21日目に、ビタミンC欠乏ラットの血漿、心臓、肝臓、腎臓、肺におけるビタミンE濃度は対照群より有意に低く、この結果は生体内においてもビタミンCによるトコフェリルラジカルの救済は起こることを示している。逆に、21日目のビタミンE欠乏ラットの血漿、心臓、肝臓、筋肉、腎臓におけるビタミンC濃度は対照群より有意に低く、このことは、試験管内の研究では考えられない、ビタミンEによるビタミンCの節約効果が生体内では重要であることを示している。このことは、ビタミンE欠乏により、脂質層でラジカル反応が亢進すると、その酸化ストレスが水層にも波及することを示すものである。ビタミンC、E間の相互作用は統計的にも有意であった。また、TBARSで測定される酸化的ストレスにおいても肝臓で両ビタミン間に明確な相互作用があることが明らかになった。
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