1990年代に特徴的な若者の行動様式は、「携帯」「モバイル」メディアを駆使して都市を浮遊しつつ、新たなるコミュニケーションの場を作り出した。それと同時に、「携帯」「モバイル」メディアをもちいた匿名の「ベル友」や、パソコンをもちいた匿顔の「メル友」に始まり、続いて顔と名前を明かした街頭での出会いに発展するオフライン行動による親密性の変容が顕著になってきた。「オンラインでの出会い」が、オフラインでの交友ひいては結婚「パソ婚」に結びつくケースさえ、珍しくなくなってきた。 本年度の研究では、街頭におけるフィールドワークや、郵送による通常のアンケート調査を実施するとともに、こうした「パソ婚」現象の実態を把握すべく、「ホームページ(ネットワーク的交友のための"家"の意。以下HP)」を開設し、実態を把握した。 メディア論では固定電話から携帯電話への流れに代表されるように、家電から個電へ、すなわち<ウチ電>から<ソト電>への趨勢変化が指摘されている。これは従来、"家" (あるいは会社・学校)をベースにしてきた人間活動の基本機能(宿泊・儀礼・食事・教育等、さまざまな機能)が、今は、家は寝るだけで他の家庭機能は外部化されつつある。 逆に、ホームページ調査によって明らかになったのは、家屋というハードウエアに囚われない水面下における、HPという名の新しい社交の結節点のありようであった。「携帯」 「モバイル」メディアは、匿名匿顔のHP的オンライン世界と、街頭でのオフライン世界との"インターフェイス"的役割を果たしている。
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