助成2年目は、日本のマラリア頻発地域であった沖縄県八重山地方と、滋賀県彦根市、近江八幡周辺で、当時の、マラリア撲滅のための保健所、医師、行政官、研究者などの取り組みに関する文献や当時の新聞記事を収集するとともに、関係者へのインタヴューを実施した。その結果、八重山地方のマラリアの多くはアノフェラス属ミニマスを媒介とする熱帯マラリアが中心で、石垣島の山際の開拓地や西表島全域のジャングルでの湿気の多い場所や湧水地での蚊の発生によるであるが、滋賀県の湖辺一帯や京都府の旧巨椋池周辺、福井県嶺北地方の湿田地域のマラリアはアノフェラス属シネンシスによる三日熱マラリアであり、死亡率において前者が格段に高いことが判明した。1945年から数年のマラリアの急増は、外地引揚者でマラリア感染者によるもののほかに、八重山諸島ではさんご礁のマラリア無病地からのマラリア汚染地域への疎開、食糧難による抵抗力の減退が大きな要因として考えられる。「戦争マラリア」については、湿地開発とは別の視点での考察も必要なことが判明した。このほか、前年からの継続で、アルバイトを雇用して、湿潤熱帯アジア地域のマラリアデータベースを作成している。次年度はこの分析を中心にしたい。
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