愛知県刈谷市の都市景観について、親子という市民の参加による「景観への気づき」をもたらすように研究実践を試みた。刈谷市は平坦な西三河地域の都市(人口13万)で、南北に長い景観なので、それを三つに分け、北から三つの小学校校区を核とした景観区域を設定した。研究に当たっては、刈谷市教育委員会学校教育課の紹介から、富士松南小学校、小高原小学校、双葉小学校の三校に協力してもらい、主に4学年児童を持つ親と児童から、調査参加希望者を募った。積極的な協力を申し出た保護者は約1割と少なかったものの、「依頼されれば協力する」との回答を得た親子を入れ、約280組程度の参加者を得ることに成功した。景観写真は「21世紀に残したい刈谷の風景」と題して、「使いきりカメラ」(レンズ付きフィルム」を配布し、昨年10〜11月にかけて撮影を実施した。現像されたプリント写真には、親子でコネント文を記入してもらった。集計の結果、自然系(田畑も含む)の景観を撮影した写真は48%、建築物を撮影した写真が30%、鉄道や道路などを撮影した写真が12%などといった結果を得た。都市化が進む刈谷市において市民が望む景観はやはり自然的な要素が主要を占めるということが分かった(詳細は『報告書』参照)。 1998年3月には、刈谷市中央図書館において「親子で撮った風景写真展覧会」を催した。この結果は市の都市計画課も注目し、市民向けの家景観啓発誌で紹介された。本研究を通して、子どもの景観に対する興味関心は高かった。地理教育は市街地部分のみならず、農村景観も教材化できる方法論を持っている。土地利用や都市化の様相を通して、子どもやその親を取り巻く地理景観の観察認識の育成に寄与することができる。
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