本研究は、日本の山間盆地における霧日数減少の原因を追及するものであり、以下のことが判明した。 1. 日本の山間盆地の年間霧日数は、早いところで西暦2000年に消滅(旭川)、多くの地点で2010年代に消滅する速度で減少している。 2. 一般に、暖候季(4月-9月)に著しい霧日数の減少がみられる。経年変化の調査期間を前年度の1951-1990年からさらに6年延長し、1996年までとした結果、上野(三重県)など、90年代に入り、暖候季の霧が消滅してしまったところもある。上野では60年代には40日の霧日数を暖候季に数えた。 3. 暖候季の霧日数減少の主因は減反による水稲作付け面積の減少である。暖候季の霧日数と水稲作付け面積の経年変化の相関は、高山(岐阜県)の0.93を筆頭に、0.8以上の高い値を示す。人口、事業者数、市街地面積なども弱いながら負の相関をもち、霧日数減少に影響している。 4. 水稲作付け面積の減少に伴い、相対湿度、水蒸気圧が減少している。興味あることは70年代前半まで暖候季の霧日数と夜間冷却量との間にみられた高い相関が、70年代後半以降になると相対湿度との間にみられるようになることである。これは、盆地大気の水蒸気量の減少によって、近年、移流など特別な水蒸気の供給がない限り暖候季には霧は発生しなくなったことを示唆している。そして暖候季の霧が放射霧から他の型の霧に変化していることを示している。減反とともに農事暦の変化、すなわち稲作の開始時期の早まりも水田からの蒸発量を低下させており、霧日数減少に関係していると考えられる。 5. 北海道の旭川、帯広、海抜高度の高い長野県の長野、松本では例外的に寒候季の霧日数の減少が大きい。これらの地点では都市化による寒候季の夜間冷却量の低下が著しい。 6. 中国雲南省やタイの霧日数減少と比較すると、人間活動の形は異なっていてもともに2日/年程度の減少速度になっている。
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