本研究は、現成礁礁斜面に分布する旧低海氷準を指示する侵食地形と堆積による段化地形との対応を明らかにし、礁斜面地形形成のメカニズムを知ることを目的としている。 このうち本年度は礁斜面部の段化地形面の形成に関して、主に水中におけるボーリング作業を中心に調査研究を行った。現地調査は、船舶などの支援体制の整った中部琉球列島の久米島北岸及び南西岸の礁斜面て行った。なお、本研究には、(株)ジオアクトによって日本で初めて開発された水中用ボーリング機を使用した。 1997年8月には、北西岸にて水深5〜8mにみられる地形面で水深5.9m地点にてl本のコア(コア長2.65m)を得た。また、南西岸の地形面では水深14.1m地点にて1本のコア(コア長1.9m)を採取した。97年12月〜98年1月にかけては同じ南西岸の水深12.2m地点にて1本のコア(コア長7.4m)を採取した。ここでは6.92m(水深19.1m)基盤の琉球石灰岩に達した。さらに、同地点の陸側水深7.8m地点にて1本のコア(コア長2.06m)を採取した。このうち97年8月の調査で得たコアからは、5つの_<14>C年代値を得た。 この調査分析からこの地域の地形面構成層上部の上方成長速度は約0.9m〜1.7m/kyrであることがわかった。この速度は礁原内部で一般で見られる値より低い。またこの部分の形成暗期を示す年代値は期待された値よりもかなり若いことか判明した。これらのことからこの地形画上部層は完新世の海面上昇期中の安定海面の基で形成されたものではなく、極めて現在に近い時期の化石地形或いは現在も成長中の地形であることを示している。現在測定中のその他の年代値や礁斜面部に分布する侵食地形の調査分析によって礁焦斜面における基盤上へのサンゴ礁形成プロセスが更に明らかになると考えられる。
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