本研究は、現成礁礁斜面に分布する旧低海水準を指示する侵食地形と堆積による段化地形との対応を明らかにし、礁斜面地形形成のメカニズムを知ることを目的としている。 このうち本年度は礁斜面部の侵食地形と海水準変動の対応に関して、主に水中におけるボーリング作業と礁斜面表面の完新世化石サンゴのサンプリングを中心に調査研究を行った。現地調査は、海面下に沈水ノッチの存在が確旧されている中部琉球列島の与論島最南端部の礁斜面で行った。なお、本研究には、(株)ジオアクトによって日本で初めて開発された水中用ポーリング機を使用した。 調査は1998年12月から1999年1月にかけて実施した。水中ボーリングはノッチ上部の水深約5メートル地点とノッチ下部の約12メートル地点で行い、それぞれ77cmと82、5cmのコアを採取した。その結果、それらの地域の礁斜面を覆う完新世化石サンゴの層厚は数cmしか分布していないことが判明した。完新世の層厚が非常に薄いという現象はこの周辺の地域では報告されていない。何故この地点のみ完新世の層厚が薄いのかは今後明らかにされなければならない課題である。 そのため、ノッチの形成年代を特定するための試料のサンプリングは2ヶ所のボーリング地点の他、周辺の礁多面表面で実施した。更新世琉球石灰岩直上と確認された完新世化石サンゴ試料を6個採取した。現在、それらのニア・試料の整理・分析を行っている。 今後、昨年度の久米島南部礁斜面の調査結果と本年度の調査結果を総合してサンゴ礁分布の周辺域である中部が球地域の完新世海水準変動とサンゴ礁地形形成の対応の考察を深める。
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