1. 研究の背景 日本では英語教育が2002年から小学校でスタートし、中学校でも選択科目の英語が2002年から必修科目となる。それに先駆け英語教育の低年齢化の傾向は顕著であり、日本在住の外国人家族の子供、海外在住の日本人児童生徒の数も急増している。早期言語教育並びにバイリンガル教育はもはや避けて通れない課題である。しかし、児童の外国語における言語習得・中間言語能力の研究は、日本では皆無に等しい。 2. 本年度の研究課題 同時バイリンガル(Simultaneous Bi1ingualism)のケーススタディーとして、日英両語の同時習得児(T)の中間言語の縦断的実証研究を続行する。特に、一語発話期から二語発話期に亙る実際の発話を分析することにより、複数言語の習得がもたらすであろうとされる言語的な混乱の有無を解明する。 3. 本研究の成果 喃語期を過ぎ、言葉らしい言葉が発話されるようになった時点(0;8.9)から、2語発話が徐々に増す時期(2;0)までの日英両語の同義語の再分析を行った結果、総計82種類の同義語が判明し、二語発話期においても数多くの同義語の産出が明らかとなった。例えば、一語発話期に日英のどちらがで産出があり、もう一方の言語での産出が二語発話期にあった同義語は148種類にも上り、更に二語発話期に日英両言語において産出された同義語は64種類にも上る。これらの結果により、幼児期からの複数言語の識別能力の立証及び、言語の混乱説を打ち消すに十分な証拠を提供することができた。
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