都内の中国帰国者の日本語教室、日系人の多い豊橋市の日本語教室、国際結婚の女性の多い秋田県の日本語教室等の見学・調査を行った。授業に参加し、メンバーの声をきくことで、日本語教室の現状の機能と可能性について、ある程度見通しを得た。 ノンフォーマルな日本語教室は、現状の機能としては、「ボランティア教室」と言われるような広い援助の場として存在し、その下位機能として日本語の修得のための教育の場、国際交流の場、居場所としての空間等々、様々な要素が引き受けられている。組織としての性格は、時間的にも参加者的にも限定されているという制約が大きく、そのため「地域的」ではなく局所的で濃密な空間となっている。その濃密さは、一方では教師側の仕事量の多さと、教師側・学習者側双方の達成に関する不全感となっているが、一方ではこたえられないコミュニケーションの場となっている。 今後、日本語教室の可能性を論じるに際し、以上のような把握から、ノンフォーマルな教育実践の内部的改革(実践面での「どうすれば」「こうすれば」に応えるかたちの論。現在の主流)についてではなく、フォーマルな教育及び社会の空気としてのインフォーマルな教育を含めた組織の整備について追求する。原則論ではなく、「こたえられないコミュニケーション」の内実を、録画・録音し現在分析中の資料から解明し、アピールしたい。また、購入した文献資料等で、ヨーロッパ諸国の状況も参考にできる段階にあるので、比較しつつ論じたい。
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