平成9年度は、ラテンアメリカ出身留学生の日本適応に焦点をあて、日本国内の5地域で留学生に面接調査を行った。これまでの調査から得られたデータを参考にして、日本滞在が3年以上になる非日系人を中心に協力者を募り、15名を対象とした。1人2時間に及ぶ面接記録はすべて録音し、テープおこしによって記述した。面接では、主に日本に適応するにあたっての課題と、日本滞在を通しての留学生自身の行動や価値観の変化について、肯定的・否定的側面から語ってもらった。同時に、来年度の「再適応」の調査につなげるために、帰国後に予想される再適応の課題についても考えてもらった。 なお数名を面接することを予定しているが、すでに記述した面接結果については考察・分析中である。現在までの分析では、3年以上の滞在によって、留学生は自身の日本適応は概ね良好と感じており、自分の行動や価値観の変化を肯定的に捉えている。特に、時間に対する価値観については、ほぼ全員が変化を肯定的に捉えている。しかし、日本人の受動的・内向的性格については、自分とは異質なものと感じ、この点は研究環境の面で問題視されている。人間関係の中では、ラテンアメリカ人同士のつきあいが、心の拠り所となる場合が多い。 来年度は、ラテンアメリカの数か国で、既に帰国した元留学生にアンケート調査を行ない、再適応の問題について考察する予定である。
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