研究概要 |
以下の1,2,3で述べる実績をえた。 1.非線形システム Y_t=F(Y_<t-γ>,Y_<t-2γ>,...,Y_<t-dγ>)+【.tri-substituted right.】_tを考察した。ここにF:R^d→Rは未知、【.tri-substituted right.】_tはE[【.tri-substituted right.】_t|A^<t-1>_1(Y)]=0,E[【.tri-substituted right.】^2_t|A^<t-1>_1(Y)]=σ2 を満たすダイナミックノイズである。通常、決定論的カオスでは、埋め込み次元はTakensの定理に基づいて定義されるが、本研究ではFの図的表現という観点から新しい定義を与え、(Y_<t-γ>,Y_<t-2γ>,...,Y_<t-dγ>)を用いてY_tをもっとも良く予測する最適なdとγは何か、という視点から埋め込み次元と遅れ時間の推定問題を定式化した。Fは未知であるから、これをカーネル型のNadaraya-Watson推定量で推定し、予測の良さをはかる規準として交叉検証法を導入した。従来の方法では、ダイナミックノイズが考慮されていないのに対して、開発した新しいアプローチではそれを考慮していること、また"curse of dimensionality"の影響を受けにくいこと、つまりデータの個数があまり多くないときは、相対的に低い次元の空間に埋め込みデータの非線形構造をとらえることができる、という特徴をもっている。 2.上の方法を実データに適用するためには、その前提であるデータの定常性が満たされていることが必要である。そこで、定常性を検定する新しい検定法を開発した。 3.ダイナミックノイズが存在するとき観測データがカオスであるかどうかを判定する問題について、手懸かりをえるためロジスチックマップにダイナミックノイズを付与したモデルと、付与しないモデルのそれぞれからデータを生成し、二つのモデルを識別する統計的方法を開発してシミュレーションを行った。モデルの識別力はロジスチックマップの定数に大きく依存することが示唆された。
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