前年度に進めた日本語文中にしばしば現われる、連続同一母音を含む文の理解過程における研究をまとめ国際会議(研究発表参照)で発表した。この成果をフランスのCNRS心理言語・認知研究所などでも発表し討論した。これらの発表・討論を通じ、同一母音連続に先行する部分の意味性の制御のほか、後続する部分の意味性の制御を行う実験構想を得た。発話速度の影響も含め次年度に実験的検討を進める。 また、本年度は新たに「原田が薬物をなんとか見つけ出した研究者にすぐさま連絡した。」や「原田が薬物をなんとか見付け出した研究者にすぐさま送り付けた。」のように文処理過程において曖昧性の解消のために再分析が必要となるような文を刺激文として用いた実験を行った。この刺激文は、最後の動詞がmonotransitiveであるがditransitiveであるがが分かった時点で初めて最終的な分析が確定するように作られている。文頭がら情報が与えられたときどのように分析の過程が進行するかについて、i)文発声のポーズおよびピッチの変化(ダウンステップ)の解析、ii)文末の動詞が削除された文を黙読させ、削除された部分を補って文を完成させる課題によって調べた。その結果、文頭における局所的なphraseの構造を接続助詞トや副詞句によっ変化させると、それによって決まる韻律パターンが初見時の文分析の形を決めていることを見い出した。すなわち文を黙読する過程においても、人間は潜在的な韻律に影響を受けて文の分析が進められることが明らがとなった。これらの結果は言語学会大会と国際会議において発表した(研究発表参照)。 上述のように潜在的韻律の文分析に対する効果は、黙読による文完成課題によって支持されたが、さらに文末の動詞が削除された文を朗読させたときの文発話を第三者に聴取させ文完成課題をさせることによっても検討するため準備を進めている。
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