研究概要 |
実用的な機械翻訳システムの実現に向け,これまで多くの研究がなされてきた。その主流となっているのが文法解析に基づく解析型の機械翻訳手法である。しかし,現在まで機械翻訳システムが広く社会で使用されるような状況に至っていない。これは,解析型の手法が限定された文法規則で多様な言語現象に対処できず良質な翻訳結果が十分に得ることができないということによるものである。一方,ここ数年この問題を解決する手法として,実例や用例に基づく学習型の機械翻訳手法が盛んに研究されている。私も従来より実例から翻訳ルールを帰納的に学習し,翻訳を行う,帰納的学習による機械翻訳手法の提案とその評価実験を行ってきた。しかし,学習型手法は翻訳ルールを得るために大量のデータを必要とするという問題点を有する。そこで,本研究ではこの問題を解決するために,帰納的学習による機械翻訳手法へ遺伝的アルゴリズムの適用を行った。しかし,この手法では,交叉により新例文を生成する過程で大量の誤った例文が生成され,その淘汰が間に合わず結果として大量の誤った翻訳ルールを生成するという問題点があった。この問題に対し,本研究課題では特に交叉位置の決定に字面,出現位置,上位概念,訳語,品詞情報などの既存の種々の情報を利用することにより交叉位置の精度を高めるという手法を開発した。本年度は本手法を開発し、評価実験を行なった。中学1年生用の英語の教科書に出現する英文とその訳文を用いて行なった評価実験の結果、正翻訳率で28.4%の向上が見られた。
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