研究概要 |
本研究では、超長期の再現期間に対する強風・高潮・高波の極値を合理的に推定しうるシステムの確立を最終目標として、過去の異常低気圧の属性そのものを統計的にモデル化し、異常低気圧の年発生数や低気圧の発生・発達・移動に関する低気圧属性の確率的発生モデル(確率的低気圧モデル)を開発するとともに、シミュレーション結果と原資料との比較からその適用性を明らかにする。本年度は1.低気圧分布のモデル化および低気圧資料の作成および2.確率的低気圧モデルの作成を行った。 低気圧分布のモデル化では、低気圧の気圧分布を楕円型分布で近似し、低気圧属性を中心位置(X_C,Y_C)中心気圧P_C、遠方場気圧P_∞、楕円長軸の傾きθ、および低気圧半径a_1,a_2,b_1,b_2の9つの量によって代表させる。代表的低気圧の気圧分布と楕円型気圧分布との比較から、その平均的な妥当性を確認するとともに、傾度風モデルに基づく風計算結果と観測結果との比較から、楕円型気圧モデルの傾度風モデルへの適用可能性を検証の後、6時間間隔のアジア太平洋天気図より、中心気圧980hPa以下に発達した低気圧を1986年〜1995年の10年間にわたって抽出し、9つの低気圧属性資料に関するデータセットを作成した。 ついで、(a)低気圧発生モデル、(b)境界・領域内低気圧発生モデル、(c)低気圧の発達・移動モデル、の3つのサブモデルから構成される確率的低気圧モデルを作成した。(a)低気圧発生モデルは低気圧年発生数の累積分布に一様乱数を与えるものであり、(b)、(c)の低気圧発生・発達・移動モデルは境界上の低気圧属性とその変化量の平均値を重み付きスプライン関数、対象領域内の低気圧属性諸量の相関関係を回帰式で近似するとともに、平均値からの変動量を資料より求まる累積分布で表示するものである。
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