本研究では、超長期の再現期間に対する強風・高潮・高波の極値を合理的に推定しうるシステムの確立を最終目標として、日本付近を通過した過去の異常低気圧の属性を統計的にモデル化し、異常低気圧の年発生数や低気圧の発生・発達・移動に関する低気圧属性の確率的発生モデル(確率的低気圧モデル)を開発するとともに、シミュレーション結果と原資料との比較からその適用性を明らかにする。 平成9年度は、(1)低気圧属性を中心位置、中心気圧、遠方場気圧、楕円長軸の傾き、および直交する4方向の半径の9つの量によって代表させ、これらで表示可能な楕円型分布で近似した低気圧内気圧分布のモデル化、(2)1986〜1995年に中心気圧980hPa以下に発達した低気圧から読み取った低気圧属性資料に基づく確率的低気圧モデルの作成、を行った。 本年度は、(1)低気圧資料の拡張、(2)確率的低気圧モデルの再作成と適用性の検討、を行った。(1)では、前年度作成した低気圧属性データセットの期間を25年間拡張するため、1976〜1985年の間に中心気圧980hPa以下に発達した低気圧および1961〜1975年の間に中心気圧960hPa以下に発達した異常低気圧について、低気圧属性資料のデータセットを作成した。(2)では、前年度の資料と合わせた合計35年間(1961〜1995年)の低気圧属性資料に基づいて、(a)低気圧発生数、(b)境界・領域内低気圧発生、(c)低気圧の発達・移動、のサブモデルから成る前年度の構成を踏襲する確率的低気圧モデルを再作成した。そして、低気圧属性に関するシミュレーション結果の平均値および標準偏差が原資料と対応することを確認し、確率的低気圧モデルを確立した。
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