将来核融合炉では多量のトリチウムガスが燃料として使われる。大気中に出たトリチウムガスを、貴金属触媒の代わりにトリチウムガスを酸化する能力(水素酸化酵素:ヒドロゲナーゼ)を持つ細菌を用いてトリチウム水として回収するためには、生物触媒として用いる細菌は酸化活性が高く、栄養があっても無くても生存し温度や乾燥にも強いというような取扱易い特異性を持ちしかも安全である必要がある。そのような細菌を得ることを目的として、鳥取砂丘の表層土壌から分離した53株のトリチウムガス酸化菌株の中から、貧栄養培地で生育が良く酸化活性も高い放線菌6菌株を選び、栄養条件の異なる14種類の培地で生育とトリチウムガス酸化能の関係を調べ、また40℃で生育出来る放線菌10菌株について、4種類の生育培地で30℃、40℃、45℃での生育とトリチウムガス酸化能について調べた。 砂丘の砂土壌から分離したこれらの菌株は、炭素源が全く無ければ殆ど生育せず、また生育とトリチウムガス酸化能はしばしば逆比例したが、いくつかの菌株について生育が良くトリチウムガス酸化能(ヒドロゲナーゼ)がかなり高い培養条件が見いだされた。温度とヒドロゲナーゼ発現の関係では、40℃では生育した10菌株の半数はヒドロゲナーゼ活性が失われ、45℃では9菌株がいずれかの培地により程度は異なるが生育したものの、ヒドロゲナーゼ活性は2菌株にしか検出されず、この2菌株のトリチウムガス酸化の比活性は45℃ではやや減少した。この2菌株は50℃では生育しなかったが、通常土壌放線菌では40℃以上で生育するものは非常に少ないので、10菌株は砂丘土壌での特異性を示す菌株といえよう。これらの結果から、最も条件に適うのは分離菌株No.162で30または40℃でISP4培地を用いると良いと結論された。
|