亜酸化窒素(N_2O)ガスは、温室効果ガスであると同時にオゾン層破壊の原因物質であることが見い出され、近年の大気中濃度の上昇が大きな注目を集めている。食糧増産にともなって使用量が急増してきた農耕地での窒素肥料の施用が、重要な亜酸化窒素発生源として指摘されている。本研究は、まず土壌中で亜酸化窒素ガスの吸収が起こっていることを明らかにし、その作用が土壌微生物活動によることを確認して、当該微生物の単離と生理的特徴を明らかにしたのち、この微生物を用いて土壌からの亜酸化窒素ガス放出量を制御することが可能かどうかを検証するための、基礎的知見を集積することを目的とした。本年度に得られた成果は以下の通りである。 土壌の中で亜酸化窒素ガスの吸収が起こっていることを明らかにした。 畑土壌を酸素濃度および水分条件を3〜5段階に変化させ、密閉系に亜酸化窒素濃度を3レベルで変化させ培養し、培養期間中の各ガス濃度を高性能キャピラリーガスクロマトグラフで追跡した。さらに、土壌への亜酸化窒素の吸収現象を代表的畑土壌のアロフェン質および非アロフェン質黒ボク土壌6種類を用いて、確認した。 2)その作用が土壌微生物活動によることを確認した。 複数の抗生物質を添加したりオートクレーブで処理をして土壌殺菌した後に、上記と同様な培養実験を行ない、対照区と亜酸化窒素濃度の変化を比較することで、亜酸化窒素吸収が土壌微生物活動によることを確認した。次に、土壌微生物のなかで、まず細菌のどの属が寄与するかも明らかにした。窒素肥料のモデルとして硫酸アンモニウムや硝酸カリウムなど塩類溶液・粉末を添加して、亜酸化窒素ガス濃度の変化を経時的に測定した。さらに、有機物などの添加効果を調べ、アセチレンなどの阻害が起こることを確認した。
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