中国大陸で、大気エアロゾルと黄砂エアロゾル発源地土壌を採取した。中国大陸で採取した大気エアロゾルの濃度は100〜1000μg/m^3のオーダーにあり、日本の10倍以上であることが判った。春季を中心に夏季の一部期間を除くほとんどの季節で、硫酸塩と黄砂および燃焼系煤が大気エアロゾルの主成分であった。硫酸塩は、イオンバランスからアンモニア態とカルシウムによって中和された塩として存在すると考えられた。カルシウムは、黄砂エアロゾルの主成分の一つであり、大気中で硫酸イオンとの何らかの反応があることを示唆していた。本来、硫酸アンモニウム形態のエアロゾルは、それ以上反応が進行しない物質と考えられていたが、中国大陸のエアロゾル中の硫酸塩の存在状態から考えるに、黄砂粒子と大気中で高濃度混合した場合、反応の可能性が否定できないと思われた。そこで、発源地土壌から人工黄砂エアロゾルを作製し、それと硫酸アンモニウム粒子との接触反応実験を行った。その基礎的室内実験から、黄砂と硫酸アンモニウムが、湿度60-70%下において、接触面で化学反応を起こすことが明らかになった。その反応速度は、ガスと違って非常に遅く、日のオーダーで進行することも判った。黄砂エアロゾルは、中国で発生後日本に飛来するまでに2-3日を要している。また、日本海上空を飛来するため、高湿度状態を経験することも判明している。その飛来中に、硫酸塩や硝酸塩等人為汚染物質を取り込むことが裏付けられた。
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