本研究は、東北アジアの先進地域におけるモータリゼーションによる環境状況とそれに対する社会意識の変化を捉え、それをもとに後発地域における交通公害対策の課題を明確にすることを目的としている。本年度は、日本のモータリゼーションに起因する都市公害問題の経緯や現状と法律・制度に関わる資料収集及び整理を行うとともに、その問題点とそれをふまえた他のアジア諸国への示唆をまとめた。特に、今後急激な都市化が予想される中国に対して、自動車排出ガス規制の早期強化や環境負荷を考えた都市開発などの必要性を指摘した。さらに、中国の国務院発展研究センターや精華大学及び韓国の弘益大学の各研究者を招き、両国の都市交通環境について意見を交換した。特に、中国における限られた社会階層の自動車保有状況や将来の保有の一般化に伴う急増の見込み状況、及び韓国において既に発生している都市交通混雑問題とその対応策の試みについて情報を得た。社会意識の面に関する文献収集も行い、定量的に把握しにくい社会意識と行動への要因に関するアプローチ方法に関する研究を整理した。それをふまえ、3カ国の各都市における自動車保有・利用状況と社会意識に関するアンケートを行うための、調査設計を行っている。特に、各個人の都市内の行動の現状と自動車に対する意識を問う項目に配慮し、互いの連関の有無やその強さを分析できるようにするとともに、モータリゼーションの進展度合いの異なる3国に対して、どのような共通性及び異質性を見いだすかに着目している。
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