【平成10年度の研究実績概要】複雑な糖鎖型の有用プローブを合成する目的に、酵素法を始めとして保護や脱保護の必要がない方法論が検討されている。本研究では、全く新しい萌芽的試みとして、外部から特異的に認識可能な切断性タグを組み込んだ人工基質を用いる糖鎖形成と変換を検討した。 1. 切断性光反応基の開発 まず、切断可能なタグについて検討した。すでに前年度の成果で、極めて汎用性の高いアルデヒド型のジアリジンが簡単に合成可能となったので、これを用いてWittig反応により桂皮酸型の誘導体とし、切断基を導入するための前駆体をえた。次いで、これを酸化してジオール体へと導き目的の切断型とした。さらに、このものを常法のシスジオール酸化反応にかけると、炭素-炭素結合の開裂により最初の原料が高収率でえられることから、期待通りの切断能を有することも確認した。 2. プローブの酵素合成 我々が開発した、解析効率化のためのビオチン化プローブ合成を目的に、光反応性のN-アセチルグルコサミンを基質とする酵素反応を検討した。この人工基質は、ガラクトース転移酵素の良好な基質となり、目的のビオチン化ジアリジンを有するN-アセチルラクトサミンプローブを高収率で得た。 3. オキシアミン型ジアリジンの開発 極めて多種多様の糖鎖構造を効率良く光アフィニティープローブに誘導するには、糖鎖を、無保護のまま利用できる方法の開発が極めて重要である。本年度は、オキムライゲーションを利用し、種々の非放射性光アフィニティープローブが調製可能な実用的試薬を開発した。また、これを種々の糖鎖型プローブ合成に応用し、レクチンの光アフィニティーラベルも検討した。その結果、各々の糖鎖に結合するレクチンがいずれも特異的にラベルされ、非放射性プローブの極めて簡単な合成法を確立した。
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