亜鉛フィンガーは代表的なDNA認識モチーフであるが、亜鉛以外の他の金属を含有した金属モチーフは未だ自然界からは見つかっておらず、また人工的にも創製されていない。そこで、3個の亜鉛フィンガーを有する転写因子Sp1の直接の亜鉛配位アミノ酸であるシステイン残基のヒスチジン残基への置換を試み、新しい蛋白質による金属フィンガー形成能およびDNA結合能について検討した。しかし、システイン→ヒスチジン置換によって期待された他の金属、特に銅(II)フィンガーの形成およびそれによるDNA結合は、明確には認められなかった。次に、Sp1の2番目の亜鉛フィンガーに相当する約30個から成るペプチドを化学合成することを計画した。この際、天然に存在する唯一の銅(II)四面体蛋白質であるブルー銅蛋白質の情報から、1個のシステインをメチオニンに残基に置換したペプチドを設計・合成した。精製後、親規ペプチドを用いて銅(II)錯体を形成させ、そのESRスペクトルを測定したところ、典型的なペプチド-銅(II)錯体ESRパラメーターを与えた。この銅(II)フィンガーはDNA結合能を有することがわかったので、現在、ペプチド配位分子の最適化のための分子設計を行っている。
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