研究概要 |
1-ピレニルボロン酸がDNAにインターカレートし,可視光照射下でラジカル機構でDNAの一本鎖を切断することをすでに見いだしている。そこで,エンジイン型抗がん抗生物質エスペラミシンの作用メカニズムと同様のビラジカル構造を可視光照射で生成すると期待される芳香族ジボロン酸の分子設計を行った。1-ピレニルボロン酸が可視光照射下でラジカル機構でDNAの一本鎖を切断することをすでに見いだしていることから,まずジボロン酸修飾ピレンの分子設計を行った。効率良くビラジカルを発生させるために対称的な位置にボロン酸を導入することを念頭におき,1位および6位にボロン酸を導入することにした。まず,選択的にピレンの1,6位に臭素化を行い,1,6-ジブロモピレンを得た。まず始めに、1,6-ジブロモピレンを一気にジリチオ化しボロン酸を導入する合成ルートを採用した。ジリチオ化は進行したが,ボロン酸が2つ導入された化合物は得られず,モノボロン酸修飾ピレンが主生成物であった。そこで合成ルートをジリチオ化の後,ジトリメチルシリル化し,さらに三臭化ホウ素を用いる求核置換反応に変更し,ジブロモボウ素基を1,6位に導入することに成功した。さらに,アルカリ加水分解をおこない目的生成物(1)を得た。化合物1は,supercoiled double strand circular DNA plamid ColEl(colDNA)に1-ピレニルボロン酸より強く結合した(Scatchard plotより求めた結合定数は,1に対して1.59X10^6M^<-1>,1-ピレニルボロン酸に対して1.27X10^5M^<-1>)。次に水-アセトニトリル混合溶媒中において光による分解反応をコントロール実験として行ったところ,ピレンが65.3%の収率で生成した。現在,DNAの光切断反応を詳細に検討中である。
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