研究概要 |
1-ピレニルボロン酸がDNAにインターカレートし,可視光照射下でラジカル機構でDNAの一本鎖を切断することをすでに見いだしている。そこで,エンジイン型抗がん抗生物質エスベラミシンの作用メカニズムと同様のビラジカル構造を可視光照射で生成すると期待される芳香族ジボロン酸の分子設計を行った。1-ピレニルボロン酸が可視光照射下でラジカル機構でDNAの一本鎖を切断することをすでに見いだしていることから,まずジボロン酸修飾ピレンの分子設計を行った。効率良くビラジカルを発生させるために対称的な位置にボロン酸を導入することを念頭におき,1位および6位にボロン酸を導入することにし、合成を行った。1,6-ピレニルボロン酸は,supercoilcddoublestrandcircularDNAplamidC0lEl(colDNA)に1-ピレニルボロン酸より強く結合した(Scatchardplotより求めた結合定数は, 1に対して1.6×10^6M^<-1>,l-ピレニルボロン酸に対して1.3×10^5M^<-1>)。次に水-アセトニトリル混合溶媒中において光による分解反応をコントロール実験として行ったところ,ピレンが65.3%の収率で生成した。colDNA(1×10^<-6>M)を含む水溶液中に化合物1(5×10^<-6>M)を加え30℃で光切断反応を種々の条件下で行ったところ以下のことが明かとなった。(1)暗所では全くDNA切断反応が進行しないこと、(2)光照射下ではFormIからFormIIあるいはFormIIIへと変換された、(3)一重項酸素トラップ剤であるNaN,は全く影響を与えない、(4)ラジカル阻害剤であるTEMPO存在下では、切断活性が39%に減少した。ただし、TEMPOは化合物の励起状態に影響を与えない、(5)ボロン酸と相互作用するD-frLuctose存在下では、反応が進行しない(これは錯形成に伴いボロン酸がボロネートアニオンに変換されるため)。以上の結果は、DNAの切断機構がラジカルメカニズムであることを示している。モノボロン酸化合物との比較から、化合物1は、FormIII/FormII比がモノボロン酸より大きく、ビラジカルメカニズムでDNAを切断することが示唆された。
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