平成10年度は当初の計画に従い、分光学的手法による三重らせん形成、及びその安定性に関する物理化学的研究、さらにゲル電気泳動による三重らせん構造の詳しい解析をを行なった。 以下に実績を記す。 1). 先ずα-2'-デオキシヌクレオシドの結合した固相担体を調製し、これを用いて3'-末端より11量体の鎖長を持つα-DNA鎖を常法により合成した。引き続きこのDNAの5'-末端に対し、β-ヌクレオシド・3'-フォスフォアミダイト体を結合させ、15量体のβ-DNA鎖を伸長させることにより、3'-末端側にα-DNA構造、5'-末端側にβ-DNA構造を持つII-型キメラDNAを合成することに成功した。 2). 二本鎖DNAに対し、生理的条件下でII-型キメラDNAを作用させ、温度可変機能を持つUV分光器を用いた測定により三重らせんの形成、及びその熱力学的安定性についての解析を行なった。その結果、II-型キメラDNAは、標的となる二重鎖DNAに結合して三重鎖を形成する能力を持つことが示唆された。しかもその安定性は、対応するβ-DNA部分が形成する三重鎖に比べ、大きく向上していることも判明した。 3). 2)の結果をさらに詳しく解析するため、標的となる二重鎖DNAを放射標識化し、これにII-型キメラDNAを結合させた後に二重鎖DNA特異的分解反応を行い、このゲル電気泳動分析、いわゆるフットプリントアッセイ実験を行った。その結果II-型キメラDNAと標的二本鎖DNAとの三重鎖では、当初の期待通リキメラ中のα-鎖部分、及びβ-鎖部分が共に標的鎖と結合していることが確認された。
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