研究概要 |
H,K-ATPase(GI画分)にCaを添加して内在性キナーゼによるリン酸化反応を行ったところ、Ca濃度に依存(K1/2=1.6μM)してα鎖N末端セリン残基のリン酸化量が増加した。界面活性剤CHAPS存在下では、α鎖のリン酸化量は減少し、Ca濃度依存性も消失したが、PKC活性化剤TPAの依存下における∂鎖のセリン残基のリン酸化は、CHAPSの有無に関わらず、PKC特異的阻害剤で阻害された。セリンキナーゼの基質としてH,K-ATPase∂鎖N末端のTyr7、Tyr10を共にPheに変異させた融合蛋白(Y7,10F)、あるいは合成基質POLY(Arg:Ser=3:1)を用いると、CHAPS存在下でのリン酸化はCaの添加に依存せず〜3倍以上に増加した。CHAPS存在下でのY7,10Fのリン酸化はCaの添加の有無に依存せず、TPAによって約1.5倍に促進され、PKC特異的阻害剤でほぼ完全に阻害された。また、GI画分で抗PKC抗体との反応性が検出された。以上の結果より、H,K-ATPase標品にはPKCが内在し、この酵素が、内在するチロシンキナーゼがTyr10とTyr7をリン酸化するのと同様に、膜結合、H,K-ATPaseの∂鎖Ser27を特異的にリン酸化することが明らかになった。さらに種々のキナーゼに対する抗体を用いてこれらを同定した結果、セリンキナーゼは少なくともPKC,αとβII、チロシンキナーゼはSRCに関連をもった。しかし従来報告されているSRCとは異なる新たなチロシンキナーゼであることが明白となった。
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