研究概要 |
フロリゲン(花成ホルモン)は存在が予想されながらその実体は不明であり、また花芽誘導の機構も明かでない。本研究はフロリゲンがシグナルレセプター型のプロテインキナーゼ(SRPK)によって花成誘導を行うのではないかという作業仮説のもとに、典型的な短日植物であるアサガオ(Pharbitis.nil,strain V10let)を用いて、(1)花成讃導に対するプロテインキナーゼ阻害剤の影響、(2)花芽誘導初期過程で発現する遺伝子の探索を行った。その結果,(1)非選択的プロテインキナーゼ(PK)の阻害剤であるK252Aとスタウロスポリン、ミオシン軽鎖プロテインキナーゼ(MLCK)の選択的阻害剤であるKT5926が極めて低濃度(1nM-10nM)で花芽形成を阻害すること、また、PKAとPKCの阻害剤であるH7とHA-1004(IC_<50>=50μM)も花成を阻書した。しかし、PKAの選択的阻害剤であるH-8,PKGの阻害剤のKT5823は花成を阻害しなかった。チロシンキナーゼの阻害剤であるハービマイシンも花芽形成を阻害した。一方、H7とHA-1004は暗処理後投与すると花成を促進するなど花成誘導にプロテインキナーゼ(PKC,MLCK)が深く関与していることを示唆する結果を得ている。(2)花芽誘導初期に生長点で発現する遺伝子の探索をデイファレンシャルスクリーニング法で行い、花芽誘導条件下で減少する4個のcDNAクローン(Pn14,21,53,73)を得て、これらの塩基配列と発現様式の解析を行った。塩基配列の解析からPn14,21,53はそれぞれ、ダイズのEarly nodulin#315,トウモロコシのフェレドキシンIII、トリプシンインヒビターとの相同性が高いことわかった。これらの遺伝子の花成誘導における役割は今後の解析が必要である。
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