1.人工脂質膜小胞(リポソーム)を作成し、これにニワトリ砂嚢から単離精製した膜結合蛋白質タリンを加えてその形態の変化を光学顕微鏡を用いて観察した。観察結果はCCDビデオカメラによって撮影記録し、リポソームおよび蛋白質の挙動は画像解析装置およびパーソナルコンピュータを用いた半自動解析装置で解析した。リポソームにタリンを加えると、リポソームに安定で大きな膜穿孔がおきた。穿孔によって膜に生じた穴はタリン濃度に依存して拡大し、最終的にリポソームは開いたシート状の一層の脂質二重膜になった。この変化は可逆的で、開いた脂質二重膜はタリンの希釈によって元の閉じたリポソームに戻る。蛍光標識したタリンを用いた実験から、タリンが膜開口部に局在していることもわかった。おそらく、タリンは閉口部の縁に結合し、脂質二重膜の疎水性の部分を覆っているものと思われる。これは、開放端のある脂質二重膜が水溶液中で安定に存在できることを示した最初の観察結果である。現在、この膜穿孔の起きる機構を研究すると共に、タリンの他にこの様な膜穿孔活性を持つ蛋白質が存在していないか探索中である。 2.細胞骨格の1つであるアクチンとアクチン線維架橋蛋白質を同時に封じ込めたリポソームを創り、その形態形成を観察した。その結果を基に、それらアクチン架橋蛋白質の生体膜制御における役割およびその制御機構を解析中である。実験に使用したアクチン線維架橋蛋白質とそれらの機能は次の通りである。 フィラミン:アクチン線維の網目構造を形成させる α-アクチニン:緩く屈曲し易いアクチン線維の束を形成する ファッシン:強固で直線的なアクチン線維の束を形成する
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