ヘム生合成の最終段階でプロトポルフィリンIXに鉄を挿入する酵素であるフェロキレテースを遺伝子工学的に改変し各種のミュータントを分離して、この酵素の機能ドメインに関する情報を得ると共に、マグネシュームを挿入するようになったミュータントの分離を目的として研究した。 1)プロトポルフィリンIXに鉄以外の原子を挿入した場合、そうした大腸菌細胞を選別出来るような系の作製を試みたが、目的に堪えるような選別系は作れなかった。2)光合成生細菌のマグネシューム・キレテース遺伝子と大腸菌のフェロキレテース遺伝子のキメラ遺伝子を人工的に作製する実験を続行している。活性あるキメラ遺伝子はまだ得ていない。3)機能ドメインを知るため、ポルフィリンを基質として働く酵素をいろんな生物種について遺伝子レベルから比較検討した。たとえば、イネのフェロキレテース遺伝子(cDNA)、ダイズのプロトポルフィリノーゲン・オキシダーゼの遺伝子(cDNA)のクローン化に成功し、塩基配列を調べてポルフィリン環認識のコンセンサス配列などを検討した。4)大腸菌のフエロキレテースやプロトポルフィリンノーゲン・オキシダーゼ(PPOX)遺伝子の欠失株を作製し、これらの欠失株からの復帰株の分離を試みた。プロトポルフィリンノーゲン・オキシダーゼ遺伝子の欠失株から復帰株の分離に成功し、当該変異遺伝子の同定を行った結果、このミュータントではポルフィリン生合成経路において、プロトポルフィリンノーゲン・オキシダーゼ遺伝子の一段階前の酵素であるコプ口ポルフィリノーゲン・オキシダーゼ(CPOX)遺伝子のプロモーター領域に変異があり、コブ口ポルフィリノーゲン・オキシダーゼの多量生産がプロトポルフィリンノーゲン・オキシダーゼ遺伝子の欠失を補っていることがわかった。
|