ニューロンや上皮細胞などに見られる細胞極性形成メカニズムの解明は、個々の細胞の発生・分化のメカニズム解明に必須であるばかりか、細胞間相互作用を通し、固体の形態形成の分子論的基礎を与える重要な課題でもある。本研究では、上皮細胞における細胞極性形成の初期過程の細胞生化学的指標として、M期に小胞化したゴルジ体のリアッセンブリーする細胞内の「位置」に注目し、その「位置」決定因子を探索するためのアッセイ系を確立した。培養MDCK細胞に海綿代謝物イリマキノン(IQ)を可逆的に作用させることにより、細胞周期依存的なゴルジ体の小胞化・再集合現象を再構成できる。抗生物質ストレプトリシン0(SL0)により、形質膜を部分的に透過性にしたセミインタクト細胞を調製した。この状態で細胞質を洗い流し、新たに外部よりL5178Y細胞より調製した細胞質とエネルギー再生系(ATP再生系など)を加えて、種々の条件でインキュベーションし、ゴルジ体のリアッセンブリーを誘起させることに成功した。このリアッセンブリーは、タキソ-ルで安定化させた微小管が必要であり、イリマキノン洗浄後、30分以内に核周辺領域にゴルジ体の一部の最初の集積体(Golji nucleating structure : GNS)が観察された。その後、この構造体を核にしてゴルジ体が成長していくことがわかった。このGNSのpositioningに関与する細胞質成分を同定するため、本アッセイ系が有用であることがわかった。
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