セミインタクト極性細胞内で、細胞周期依存的なのゴルジ体の小胞化・リアッセンブリー過程の再構成系を確立した。まず、ゴルジ体局在化シグナルを持つ膜蛋白質とGFPとの融合蛋白質を恒常的に発現しているMDCK細胞株を樹立した。ポリカーボネートトランスウエル上で培養したこのMDCK細胞をストレプトリシンO(SLO)で処理し、形質膜を部分的に透過性にしたセミインタクト細胞を作成した。この細胞に、イリマキノン(IQ)を作用させ、ゴルジ体を小胞化させた(IQ依存的小胞化過程)。次に、IQをよく洗い流し、新たに外部よりL5178Y細胞の細胞質とエネルギー再生系(ATP再生系)を加えて小胞化したゴルジ体の核周囲へのリアッセンブリーを再構成した(リアッセンブリー過程)。この再構成系を用い、小胞化過程・リアッセンブリー過程それぞれを2つの素過程にdissectionすることに成功した。次に、それぞれの過程のキネティックスを解析するため「morphometric analysis法」を開発し、中間状態としてゴルジ体が大きめの小胞に分裂し、細胞質中に分散する状態(punctated Golgi membarane)を同定できた、また、それぞれの素過程に必要な因子・阻害剤を検索した結果、ゴルジ体の小胞化前期過程には三量体G蛋白質、リアッセンブリー後期過程にはsmall GTP結合蛋白質の関与を示唆する結果を得た。セミインタクトMDCK細胞に、M期カエル卵抽出液を用いることによってもIQの場合と同様にゴルジ体を小胞化させることに成功した。この過程も、2つの素過程にdissectionできATP再生系を必要とすることが判った。また細胞分裂時に活性化されるキナーゼに対する阻害剤を用いた実験より、過程前期はMAPキナーゼキナーゼ(MEK)が、そして過程後期にはcdc2キナーゼが段階的に効いていることが判った。この再構成系の確立によって、今後、ゴルジ体の細胞周期依存的なグイナミクスの研究とそれぞれの素過程に必要な因子の検索が可能になった。
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