研究概要 |
Levinら(1995)は、原条期のニワトリ胚のオルガナイザーであるヘンゼン氏結節の左側の近傍に、成長因子activinを染み込ませたビーズを置いて全胚培養した結果、50%の個体に形成期の心臓の左右の逆転が見られることを見出した。ニワトリ胚ではactivin β_B鎖mRNAの左右非対称な発現が報告されているが、両生類では内在性の中胚葉誘導因子として知られるものの、そのようなactivinの非対称な分布は知られていない。両生類胚の予定オルガナイザー割球にactivin mRNAを注入する実験で左右軸の反転が見られなかったという報告もある(Hyattら1996)。 両生類胚においても、activinは内臓左右軸の成立に関与するのであろうか?activinを0.2-2.5mg/ml含む人工淡水で、卵膜を剥いた神経胚期のツメガエル胚を4-5時間暴露した。処理後、通常の人工淡水で内臓の左右性が判定できる4日胚まで育てた。その結果、最高18%の割合で内臓逆位胚が生じた(n=156)。処理胚と同じbatchの胚で卵膜を剥いただけのものでは自然胚レベルの1%しか逆位を生じなかった(n=104,P<0.1%)。逆位を起こした胚のうち、心臓と腸の両方に逆位を示した胚や心臓のみに逆位を示した胚は多数在ったが、(心臓は正位で)腸にのみ逆位を起こした胚は見られなかった。activin の作用阻害剤であるfollistatin、塩基性繊維芽細胞成長因子bFGF、神経成長因子NGF等でも同様に処理したが、activinと異なり内臓逆位は無処理胚程度にしか起こらなかった。これらの結果から、神経胚期のツメガエル胚の左右軸成立機構にactivinが関与することが示唆された。
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