研究概要 |
1. 上皮組織中の細胞の幾何学モデルとして細胞バーテックスモデルを作製したことは昨年の報告で述べた.今年度は、このモデルの改良をおこない、幾つかの極端な条件下で考えているように働くことを確認した. 昨年からのつづきである局所的な情報だけで変形を進めるようにプログラムを改良し終えた.また、これまでは角柱細胞の体積は不変と仮定し、上皮シート上で多角形細胞が広がった場合、細胞の高さが変化した.しかし、細胞がゲル様の物質でできていることから、浸透圧による体積の変化はあり得ると考え、高さが変わらないモデルも考えることにした。 細胞バーテックスモデルは、純粋に2次元の問題として考えれば、角柱細胞の上皮シート面の面積が均一な大きさになるという制約下で細胞間境界長ができるだけ短くなる現象を記述するものである.初期条件として(a)境界長は短いが面積は大小まちまちのパターン、(b)面積は均一だが境界長が長いパターンを使い、いずれも境界長が短く、面積が均一な蜂の巣状パターンを得られることを確認できた。この結果は日本物理学会1998年秋の分科会(琉球大1998,9/26)で「上皮組織形成の力学モデルII」として発表した(長井達三・本多久夫26p-G-19)。 2. 3次元バーテックス・ダイナミクス・モデルのコンピュータープログラムを作成しほぼ順調に動くようになった。細胞塊が力学的に平たく変形されたときに、中の細胞は一時的に平たくなるが、やがて細胞は元の形に回復する興味深い現象に応用し、うまくシミュレーションできた.3次元細胞でも細胞膜にそって収縮の機構が働いていることを示唆する結果なのだが、これの実体を考察中である.この結果は日本生物物理学会第36回年会(福岡市1998.10/2)で「3次元組織構築学のための多面体細胞模型」として発表した(本多久夫・種村正美・長井達三、ID1700)。
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