脳における内因性一酸化炭素の動態

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09878188
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 渋木 克栄 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40146163)
• キーワード: 一酸化炭素 / 一酸化窒素 / 大脳聴覚野 / 小脳 / 長期増強 / 長期抑圧

研究概要

我々は脳シナプス可塑性におけるNOとCOの役割について研究を進めてきた。COがNOによるcGMP産生促進を拮抗的に阻害するという報告があり、これに基づいてNO依存性のシナプス可塑性を外来性・及び内因性のCOが阻害するのではないかというのが我々の仮説である。従来小脳長期抑圧におけるCOの役割について研究を進めてきたが、今年度は大脳聴覚野の長期増強におけるNO・COの生理作用について研究を行ってきた。その結果判ったことは、(1)大脳聴覚野の第II/III層の長期増強はNOに無関係に起きるが、第V層の長期抑圧はNO依存性である。即ちNO合成酵素の阻害剤によって長期増強の成立が阻害される。(2)電気化学的NOプローブで大脳聴覚野の第IV層の電気刺激に対するNO放出を第II/III層と第V層で記録したところ、第V層の方が約7倍放出量が多いことが判った。またこのNO放出はグルタミン酸受容体受容体の阻害剤CNQXとAPVの同時投与でほぼ完全に抑制された。(3)CO投与下に長期増強を誘発したところ、第II/III層では影響を受けなかったが、第V層の長期増強は阻害された。また内因性のCO産生を促進するδアミノレブリン酸も第V層の長期増強のみを選択的に阻害した。
以上のように大脳皮質聴覚野スライス標本でも層特異的にNOとCOが拮抗的に機能することが判った。またCOに感受性の高い電気化学的なプローブによって、小脳スライス標本における電気刺激によるCO放出を検出しようとしたが、検出できなかった。COの放出制御メカニズムについては来年度以降の問題である。

研究成果

• [文献書誌] Wakatsuki H, et al.: "Long-term potentialion suppressed by carbon monoxide in layer V of the rat auditory cortex." Acta Medica et Biologica. (in press).
• [文献書誌] Fujisakai T,Kudoh M,Shibuki K: "Acute neural damage in the rat neocortex in vitro induced by a combination of anoxia and mechanical stress." Neuroscience. (in press).
• [文献書誌] Kudoh M,Shibuki K: "Importance of polysynaptic inputs and horizontal connectivity in the generataion of tetanus-induced LTP in the rat auditory cortex." J.Neurosci.17. 9458-9465 (1997)
• [文献書誌] Shibuki K,Kimura S: "Dynamic properties of nitric oxide release from parallel fibres in rat cerebellar slices." J.Physiol.(Lond.). 498. 443-452 (1997)
• [文献書誌] Kudoh M,Shibuki K: "Comparison LTP between the auditory and visual cortices." Acta Otolaryngol.(Stockh.). Suppl.532. 109-111 (1997)