研究概要 |
この研究は,生物の筋肉のような,効率の良い,柔らかい,小型のアクチュエータを開発するための基礎理論と,設計手法を考えるために行われた.私が主張する研究の手法は,生物がまともに分子の熱揺動をうけるこのような中間領域の研究において,生物のエネルギー変換系が行っていると想像される仕組みを,エンジニアリングの場で構築し,その原理がわれわれに有用なエネルギー変換系を与えてくれるか否かを,一つ一つ工学的に解きあかす方法である.本年度の研究は,理論を構築するための前提条件として,極めて多数の分子レベルの基本アクチュエータを集積したシステムを設計の対象とした.この系が存在する空間では,変換すべきエネルギー源としてフラックスとして流れている場のエネルギーを考え,これを機械的仕事に変換する方策を考えた.従来のマクロの世界のアクチュエータとこの基本アクチュエータの挙動の根本的な違いは,エネルギー入力に対して出力のあいまいさがあるものとした.エネルギー変換の仕組みは,分子間衝突のような純粋に物理学的な現象を使用することとした.エネルギー変換は,時間軸に対して個々にランダムな事象として起こると仮定し,かつ多数の素子の挙動に関しては,自己組織化が起こるものと仮定した.このような課題を解くための方法論として,手始めに既に開発済みの分子衝突モデルを利用し,非平衡熱力学の理論をシステムに適用し,数値解析,シミュレーションを行った.このためにワークステーション級のネットワークコンピュータを購入し,この中でモデルを動かしている.完成された理論はWWWのホームページとして全世界に公表し,採取したデータベースもWWWにのせて公開するよう検討中である.
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