研究課題
近年、動脈硬化による循環器疾患が増加し、脳血管障害と心疾患の死因別死亡率は全体の1/3を占め、癌をはるかに上回るが、動脈硬化の評価法は十分確立されていない。この動脈硬化疾患が関連する医療負担を軽減するには予防対策が必要であるが、予防による効果は経済性だけではなく、痴呆や身体障害を予防できれば、そのメリットは計り知れない。動脈硬化の診断は近年、高解像度超音波断層装置で動脈壁の形態変化により病変の存在は診断可能になったが、予防のためには、形態的変化前に診断しなければならない。本研究は高速度超音波診断装置の形態情報に加え、トノメトリ型非侵襲的連続圧計を組み合わせ、非侵襲的に動脈硬化を機能的見地から形態的変化前に診断する機能的組織診断法である。本研究の成果(1)頚動脈内腔を計測する本方法は、従来の1次元的超音波エコートラッキング法とは異なり、血管壁の拍動による変位(ズレ)も問題にならず、心拍出の全周期に対して頚動運動の解析が可能であることを示した。(2)さらに動脈硬化評価のためのパラメータ中で加齢変化を反映するパラメータにより従来の診断法で検出できない形態的変化の起こっていない30歳代で既に動脈硬化を示唆することが分かった。(3)また統計学的解析から高血圧群と健常者群を分離できたばかりでなく、高血圧を合併する疾患と健常者を分離することができた。(4)さらに本方法によって2次的な結果として、ドップラ効果を使わずに頚動脈の変位速度も検出でき他の方法と比較しても十分な精度を持つことが示された。このためには微小磁気振動センサにより頚動脈の拍動を従来の脈波センサより安定し脈派の立ち上がりを精度よく非侵襲計測できたことが大きく寄与している。このセンサは装着感も極めて少なくスクリーニングにも導入でき、磁性体の生体計測への数少ない応用研究で、他の生体計測への応用が期待される。
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