研究課題
本研究では、非線形力学系に関する国内国外の研究動向を調査し、平成10年度以降における我が国の非平衡統計力学の研究の方向性を探った。まず、我が国の複雑系研究の動向について、複雑系研究と要素還元主義とが相反するものであって、従来の物理学が要素還元主義に陥っているとする主張の正当性について検討した。その結果、むしろ複雑系の現象論として熱力学を拡張するような方向が望ましいのではないか、特に生物現象のように力学的基礎に立脚できない場合に熱力学に代わる現象論を今後の研究の視野にいれるべきである、との認識に到達した。輸送理論の力学的基礎に関する研究動向を探索するために平成9年9月27日「第一回久保記念シンポジウム:統計物理学の基礎的問題」を東工大において開催した。その準備段階においてセミナーを開催した。さらに、ブリュッセル自由大学における不可逆過程の力学的基礎に関する研究動向の調査を行った(平成9年6月24日ー30日および平成9年10月28日ー11月2日)。更に、平成10年3月9日ー11日総合研究大学院大学葉山キャンパスにおいて国内の研究者を招いて、非平衡統計力学の枠を如何にして拡張して、新しい分野を切り開くか、についての検討を行った。その結果、平成10年11月に関西で予定されている「不可逆性と動力学系に関するソルベイ物理学会議」が、更に研究動向を探索し、新たな展望を切り開くよい機会となることの確信を得た。東工大にstatphyのメーリングリストを作り、我が国の統計力学の研究動向に関する情報交換を行うシステムを確立した。
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