研究課題/領域番号 |
09894015
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
南川 雅男 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 教授 (10250507)
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研究分担者 |
中塚 武 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (60242880)
三島 康史 工業技術院中国工業技術研究所, 研究官
奈良岡 浩 東京都立大学, 理学部, 助教授 (20198386)
岡田 尚武 北海道大学, 理学研究科, 教授 (80111334)
石渡 良志 東京都立大学, 理学部, 教授 (90087106)
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キーワード | 炭素同位体 / 個別分子同位体 / 同位体効果 / バイオマーカー / 飼育実験 / 海洋藻類 / GCC同位体分析 / バクテリア |
研究概要 |
ガスクロマトグラフ燃焼同位体比質量分析計による有機物の分子レベルの同位体比分析の技術的な現状分析と、その同位体比決定に第一義的にかかわる植物による炭素、窒素の同位体効果、およびこれらの知見を応用して地球環境変動の研究にどのような科学的展望が期待できるかという科学的評価について検討をおこなった.2回の研究集会は札幌(10月、30名)と東京(1月、27名)を開催し研究発表と討議を行った.延べ3回の海外調査では計6カ国の研究拠点の訪問と学会参加により情報を収集し検討を行ってきた.その結果をまとめると次のようになる. 現在日本では、都立大では長鎖アルカン、アルケノン、脂肪酸、各種ステロイド、地質調査所では炭化水素、ホパノイド、北海道大学ではアルケノン、長鎖アルカンの分析が実施されている.対象試料としては藻類、バクテリアなどの実験系から草本、堆積物、プランクトンなどの野外試料までに広がっている.しかし多くの研究機関では(1)機器の安定性、(2)ガスクロ・ピークの分離と同位体比の評価、(3)各種誘導体化法の適用、(4)有機分子の前処理法等についてまだ問題を抱えている現状が認識された.一方、欧米でのこの手法の研究は飛躍的に増加していることが咋年秋期に開催された国際有機地球化学会(オランダ)、AGU会議、英国、仏国、中国、カナダの研究室での情報交換で明らかとなってきた.特に現代から中生代までも含めた炭素循環や気候変動の原因究明にかかせず、地球環境研究のプローブとして今後不可欠な研究手段となると認識できる.これらの検討結果から、今後の日本での研究としては、(1)日本が得意とする藻類・微生物の飼育培養による実験系を確立し、光合成や分解における同位体効果についての体系的な知見を得る、(2)恵まれた海洋観測の機会を利用して太平洋での野外試料を網羅する、(3)陸圏、水圏での天然試料の同位体データーベース化、を行っていくこと、また同時に(4)地球規模気候変動イベントにおける同位体のシグナルを調査し、応用面での見通しをつける努力をおこなうこととした.具体的には、今後早急に分析技術の基準化をおこない、各分野に分散している研究室の技術的統一をはかることと、陸圏と水圏での野外試料の検索と分子同位体データーベースを作製するためのワーキンググループを発足させることになった.以上の結果は、報告書としてまとめ4月上旬に出版する予定となっている.
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