研究概要 |
近年,情報通信ネットワークの発達と超並列コンピュータの実用化にともない,航空機の座席予約システムや銀行のキャッシュディスペンサーに代表されるOLTP(オンライン・トランザクション)システムは,大規模化・複雑化の一途をたどっているといっても過言ではない.OLTPシステムのように,シンテムダウンによる社会的影響が極めて大きいコンピュータシステムの信頼性および保全性技術では,フォールトトレラント(耐故障)の観点からシステム全体の動特性を解析・評価することが必要とされるため,電子部品,情報伝送,ソフトウェアといった個々のモジュール単位で信頼解析を行った後,ボトムアップ的にコンピュータシステム全体の信頼性を向上させるという手法が従来までにとられてきた.しかしながら,先にも述べたように,並列的かつ非同期的に情報の伝達を行うことが今後益々必要とされるコンピュータネットワークにおいては,ボトムアップ的信頼性評価技術はシステムの稼働初期段階においてのみ効力を有するが,定常段階に移行するにつれて個々のモジュールシステムの稼働特性が大幅に変化するため,システム全体が初期状態と比較して全く異なる様相を示すことになる. よって,並列的かつ非同期的に信頼性が変化するシステムに対しては,トップダウン形式でシステム全体の信頼性を評価することが重要となり,各モジュールシステムに要求される保全技術にもダイナミックな異時的変化を考慮する必要がある.本研究では,コンピュータシステムを構成する(i)コンピュータハードウェア(電子材料),(ii)コンピュータソフトウェア,ならびに(iii)データ伝送技術,(iv)ネットワーク設計,(v)コンピュータ保全技術,(vi)信頼性基礎数理,(vii)統計的信頼性試験の7つの専門家グループによる共同研究を行い,大規模コンピュータシステムにおける新しい総合的な信頼性評価技術を実現した.このような共同研究の必要性は,トップダウン的な信頼性評価を実施するためだけではなく,種々の個別領域で現在までに達成された研究成果を総括し,それらの結果を有機的に結合させ,全く新しい耐故障コンピュータシステムの設計法を実現するためには不可欠であると考えられる.
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