研究分担者 |
末包 文彦 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10196678)
白井 淳平 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90171032)
斎官 清四郎 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80011162)
古賀 真之 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90343029)
井上 邦雄 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10242166)
|
研究概要 |
「極低放射能環境下におけるニュートリノ科学の研究」は,神岡鉱山の地下1000メートルで最初の宇宙ニュートリノ検出に成功したカミオカンデ検出器を,自然放射能レベルの1億〜百億分の1以下という極低放射能空間に改造し,1000トン液体シンチレータ・ニュートリノ,反ニュートリノ検出器(KamLAND)と,液体シンチレータ純化装置,データ収集電子回路・解析装置を総合した実験施設を4年半の歳月を費やして建設し,平成14年1月22日にデータ収集を開始した。 第一期の研究計画は,神岡を取巻く原子力発電所から飛来するニュートリノを用いてニュートリノ振動現象を検出し,3種類あるニュートリノの中のスーパーカミオカンデが発見したニュートリノと異なる種類のニュートリノの質量発見を目指した。平成14年1月より3月まで検出器の性能確認のための運転が行われた。この結果,エネルギー決定精度,エネルギー分解能,現象発生位置決定精度,逆ベータ崩壊検出効率など,検出器の重要な性能が期待通りであることが判明した。1000トンクラスの大型実験装置が,全く手直しなく直ぐにデータ解析が可能になったことは,実験技術上大きな業績である。 ニュートリノ振動研究は,3月3日から10月6日までのデータを用いて行われた。その結果,日本や韓国の全原子力発電所の熱出力のデータより求めたエネルギー3.4MeV以上のニュートリノ検出予測数は86.8±5.6であったが,実際の検出数は54で,検出数と予測数の比:0.611±0.085(統計誤差)±0.041(系統誤差)が得られた。この結果は,99.95%の信頼度で原子炉反電子ニュートリノ欠損現象の発見を初めて示すものである。 しかしながら,ニュートリノ振動の決定的な証拠となるエネルギー分布の変動はデータ数が少なく十分な信頼度で確認できなかった。このため,ニュートリノ振動の発見は,さらにデータを蓄積した解析結果を待たなければならない。 この結果は12月に論文にまとめられ,米国物理学会の論文誌Physical Review Letterに掲載された。そして,本論文中の図の一つがPhysical Review Letter誌の表紙を飾った。また,12月に米国雑誌scienceが選定した"2002年の科学10大発見"の一つに選ばれた。
|