研究概要 |
以下を研究代表者(桜井)の指導・助言のもと,研究分担者(Shakya氏)が実施した。 (1)Namasamgiti及び関連典籍に関する文献研究 タントラ自体及びManjusrikirti註を中心とした諸註釈書の読解により,文殊の異名の一つ「本初仏」がどのように理解されていたかを解明し,その成果を『印度学仏教学研究』誌上に掲載した。 (2)Durgatiparisodhanatantraチベット語訳校訂テクスト整定研究 計7本の版本を複写によって蒐集し,第1章の電子ファイル化を行った。 (3)フィールドワークに基づくネパール密教儀礼研究 カトマンドゥ盆地の仏教寺院を中心とした数度の現地調査を実施し,その成果を以下の3点に纏めた。 (a)ネパール仏教寺院でしばしば奉祀されている釈尊・般若母・観音の三尊形式がネパール密教独特の曼荼羅である「三宝曼荼羅」に由来することを解明し,『善通寺教学振興紀要』誌上で論じた。 (b)福徳財宝神として著名な持世菩薩(Vasudhara)を主尊とする儀礼の場に陪席し,その詳細を文字及び映像として記録に留めた。 (c)仏教徒出身の女児をヒンドゥー教の忿怒女尊カーリーの化身と見做して尊崇するいわゆる「クマーリー信仰」を取り上げ,ネパール宗教文化の基層を為す両宗教の交渉史の解明に資することを目的として,関連する文献の読解を行いながら元クマーリーへの聞き取り調査をも実施し,その成果の一端を「ネパールの生き神クマーリー」と題する研究発表において報告した。
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